皆さん、こんにちは!本日は、1~2歳までの親子3組にお集まりいただきました。まだ歯が生え揃わない時期で、歯みがきや口腔ケアの漠然としたお悩みを抱えているということです。長きにわたり、子供たちの歯を診てきた「やまじゅん」に歯のケアを始めるタイミングや、歯が少ない状態でのケアのコツについて、少し不安を感じていらっしゃる方々です。子どもの歯との向き合い方、歯みがきのコツについて、やまじゅんさんに聞いてみましょう。
座談会テーマ 参加者:1歳〜2歳の親子3人
『歯は生えるまでが勝負!0歳~3歳までに気を付けたいこと』
今日の座談会に参加する親御さんたちは、1歳から2歳の子どもを持つ家族です。まだ歯が生え揃わない時期で、歯みがきや口腔ケアの悩みを抱えている様子。歯のケアを始めるタイミングや、歯が少ない状態でのケアのコツについて、少し不安を感じながらも、子どもの歯の健康を守りたいと考えています。
司会者:今日は、1万人以上の患者さんの歯を診てきたベテラン歯科衛生士「やまじゅん」さんをお招きしています。親子でできる歯のケアについて、たくさんの経験に基づいたアドバイスを伺っていきます。やまじゅんさん、よろしくお願いします!
やまじゅん:よろしくお願いします!今日は、歯の本数に応じたケアのコツをお伝えしていきますね。年齢にとらわれず、歯の本数に合わせたケアが大切です。
Aさん(1歳の男の子のお母さん):うちの子は、まだ前歯が2本しか生えてなくて、ちょっと遅いかなって心配してました。でも、それって大丈夫なんでしょうか?
やまじゅん:心配いりませんよ!歯が生える時期には個人差があるので、特に遅れていると感じても焦る必要はありません。今の段階では、歯が少なくても口の中に触れることに慣れさせることがとても大事です。例えば、ガーゼで歯茎や舌を優しく拭いてあげたり、口唇や頬をマッサージしてあげるのも良いと思います。
Aさん:それなら安心しました!今からでも始められるケアがあって良かったです。もっと早く始めておけばよかったかなって思ってました。
やまじゅん:始めるタイミングに遅すぎることはないですよ。今からでも大丈夫です!日々少しずつ、赤ちゃんが口の中に触られることに慣れていけば、歯みがきも自然と受け入れてくれるようになります。
Bさん(女の子のお父さん):うちの子は前歯が上下4本ずつ揃ってきました。奥歯が生えてくるのを待っているところなんですが、今から何をしておけばいいですか?
やまじゅん:前歯が揃ってきたら、仕上げ磨きの習慣を本格的に始めるのにちょうど良い時期です。とくに3歳までは上の前歯が非常に虫歯になりやすい場所です。歯ブラシの毛先を歯の根元にあて小さくコチョコチョとみがいてあげてください。
Bさん:上の前歯を磨こうとすると下の歯よりも嫌がるのですが力が強すぎますかね…
やまじゅん:下の歯より上の歯の方が嫌がる子が多いですね。特に上の唇と前歯の間についている帯(上唇小帯)は歯ブラシが当たると痛いので注意して磨いてあげてくださいね。
力が入ってしまう場合は歯ブラシを鉛筆を持つようにすると力のコントロールがしやすいです。
Cさん(女の子のお母さん):うちの子は奥歯が生え始めていて、奥の方を磨くのが難しいんです。しかも歯みがきが苦手で大泣きされます。やまじゅんさん、何かコツはありますか?
やまじゅん:奥歯は特に磨きにくい部分ですから、最初は嫌がる子も多いですよね。まずは唇の端から人差し指を入れ、奥を広げるようにして上、下片方側ずつ磨きます。かむ面には細かい溝があるので掻き出すようにして重点的にみがいてあげると効果的です。
歯みがき…嫌がる子多いですよね。この時期は泣かずにみがかせてくれる子の方が少ないんですよ。少しでも楽しい歯みがきタイムをつくってあげる工夫も必要です。例えば⚪保護者の方が楽しく歯みがきしている様子を見せる⚪お気に入りのぬいぐるみに歯みがきをしてあげるごっこ遊びをする⚪歯みがきが終わったら思いきりほめてあげる、等々
そして歯みがきの時無言で必死に磨いてませんか?「歯がピカピカになってきたよー」など声がけしながら笑顔で歯みがきタイムを楽しみましょう。
Dさん(男の子のお母さん):うちの子はまだ夜間の授乳が続いていて、虫歯にならないか心配です。どうしたらいいですか?
やまじゅん:夜間授乳は確かに虫歯のリスクを高めることがあります。夜は唾液の分泌が少なくなり、虫歯ができやすい環境になるんです。授乳後は寝る前にしっかり歯を磨くことが重要です。どうしても授乳が必要な場合は、水やお湯で口を軽くすすぐのも有効な対策です。
司会者:やはり、日々のケアが重要なんですね。他にも気をつけるべきことはありますか?
やまじゅん:そうですね。特に気をつけたいのは、甘い飲み物やおやつです。虫歯になりやすい原因なので、食べる時間や頻度を決めておやつを与えるのが良いでしょう。例えば、グミ一粒には4g、なんとペットシュガー1本分入ってるんですよ。袋ごと渡すとついダラダラと食べてしまうので小皿に移して食べる量を決めるのがいいかもしれませんね。
Cさん:うちもおやつの時間を決めていないので、今日から意識してみます。フッ素入りの歯みがき剤っていつ頃から使えばいいですか?
やまじゅん:フッ素入りの歯みがき剤は、少し歯が揃ってきたら少量から使い始めると良いです。うがいがまだできない時は研磨剤や発泡剤があまり入ってないジェル状のタイプがお勧めです。フッ素は歯を強くしてくれる成分なので、虫歯予防にはとても効果的です。うがいができるようになったら本格的に取り入れていきましょう。
Aさん:今日は本当にたくさんのヒントをいただけて安心しました。焦らなくていいんだって分かって、ほっとしました!
司会者:やまじゅんさん、今日はたくさんのアドバイスをありがとうございました!親子で楽しく歯のケアをしていけるようになりそうです。
やまじゅん:こちらこそ、皆さんのお話もとても参考になりました。歯のケアは歯の本数に合わせて無理せず進めていくことが大事です。親子で楽しみながら歯みがきの習慣を作っていってくださいね!
司会者 まとめ
「やまじゅん」さんのアドバイスを通じて、歯が生えるスピードに悩んでいた親御さんたちも安心された事と思います。歯の本数に応じたケアをすることで、焦らずゆっくりと歯みがきの習慣を築いていくことが大切です。歯が生え始めたら、ガーゼや歯ブラシを使って少しずつケアを始め、親子で楽しみながら続けることが、将来の歯の健康を守る鍵となります。
まとめ
親子で行う歯のケアは、子どもの健康な歯の発育に欠かせない重要な習慣です。ここでは、年齢よりも歯の本数に着目した具体的なケア方法を詳しく解説していきます。各段階に応じた適切なケアを行うことで、将来的な歯の健康リスクを減らし、良い習慣を身に着けさせることができます。
1. 歯がまだない時期のケア(0~6ヶ月)
口腔ケアの準備を始める
歯が生えていない時期でも、口の中や周囲に触れる習慣をつけることが大切です。赤ちゃんは口の中に異物が入ると嫌がることが多いため、日常的に口に触れることに慣れさせておくことで、後の歯みがきをスムーズに始めることができます。これを「脱感作」と呼び、徐々に慣れさせることを目指します。
ステップ1: スキンシップとしての口腔ケア
まずは頬や口の周り、手足に触れるスキンシップを通して、赤ちゃんが触れられることに慣れるようにします。その後、ガーゼなどを使って歯茎や舌を軽く拭く習慣をつけると良いです。これにより、唾液の分泌を促し、口内の清潔を保つことができます。
ケアのポイント: まだ歯が生えていなくても、ガーゼや指で優しく口内を清掃することで、歯が生え始める頃には抵抗感なく歯みがきに移行できます。歯が生える前のケアは、口の中を清潔に保つだけでなく、歯ブラシに慣れるための準備としても重要です。
2. 前歯が2本生えたら(約6~9ヶ月)
歯みがきのスタート
最初の前歯が2本生えたら、歯みがきの練習を始めます。この時期は歯茎が敏感であり、柔らかい歯ブラシやゴム製の歯みがき用具を使い、優しく磨くことが重要です。また、赤ちゃんが楽しんで歯みがきを受け入れるように工夫することも大切です。
遊び感覚での歯みがき
この段階では、遊びを取り入れることで歯みがきを楽しむことができます。例えば、赤ちゃんが好きな歌を歌いながら歯みがきをしたり、鏡の前で一緒に歯みがきをするなど、楽しい体験に変えることで抵抗感を和らげることができます。
ケアのポイント: おもちゃ感覚の歯ブラシやキャラクター付きのアイテムを使い、歯みがきの時間が楽しいものになるように心がけましょう。また、赤ちゃんが興味を持つ時間帯を選んで、短時間でも良いので日々の習慣にしていきましょう。
3. 歯が上下4本になったら(約1歳)
本格的な仕上げ磨きを始める
前歯が上下4本生え揃ってくると、食事の際の汚れが歯に残りやすくなります。この時期から、朝晩の歯みがき習慣を本格的に取り入れ、親が積極的に仕上げ磨きをすることが必要です。特に夜は、唾液の分泌が減るため、虫歯のリスクが高まります。
仕上げ磨きの方法
親が子どもの口をしっかり開けさせ、奥歯や歯の隙間も見えるようにしながら磨いてあげましょう。歯ブラシで優しく、しかし確実に汚れを落とすことが大切です。奥歯がまだ生えていなくても、この時点で歯と歯の間や奥の部分も磨く習慣をつけると、虫歯予防に効果的です。
ケアのポイント: 子どもが嫌がる場合、膝の上に仰向けにさせて羽交い締めにする形でも良いので、しっかりと磨きましょう。嫌がることがあっても、この段階でしっかりと仕上げ磨きをすることが将来の健康に大きな影響を与えます。
4. 奥歯(第一乳臼歯)が生えたら(1歳半頃)
奥歯の磨き方と卒乳による虫歯リスクの予防
1歳半頃になると、奥歯が生え始め、さらに虫歯のリスクが高まります。特に奥歯の「かむ面」は溝が深く、汚れが溜まりやすいので、ここを念入りに磨く必要があります。
奥歯の磨き方
奥歯を磨く際は、口角から人差し指を第二関節くらいまで差し入れ、奥を広げるように歯の表面全体が見えるようにしましょう。特に奥歯のかむ面は溝が深いため、細かい動きでしっかりとブラシを動かすことがポイントです。磨く際には、なるべく短時間で済ませるよう工夫し、子どもが嫌がる前に終わらせることがコツです。
ケアのポイント: この時期には、卒乳や食事の変化に伴い、夜間の授乳や甘い飲み物による虫歯リスクも高まります。夜間は唾液の分泌が少なくなるため、口内が乾燥し、虫歯ができやすい環境になるため、必ず寝る前には歯みがきを徹底するようにしましょう。また、甘い飲み物やお菓子は控えめにし、食後の歯みがきを習慣づけることが大切です。
5. 犬歯・第二乳臼歯が生えたら(2~3歳)
乳歯が20本揃ったら
2~3歳になると、犬歯や第二乳臼歯が生え揃い、乳歯が20本になります。この時期には、子ども自身が歯みがきに積極的に取り組むようになりますが、まだ親が仕上げ磨きを行うことが必要です。
自分で磨く習慣をつける
家族みんなで一緒に歯みがきをする時間を設け、子どもに歯みがきの大切さを教えましょう。自分で歯を磨く意欲を育てるために、親が手本を見せることも効果的です。ブクブクうがいができるようになったら、歯みがき剤を使うことも可能になります。
ケアのポイント: 歯みがき剤はフッ素入りのものを選び、少量から始めると良いです。また、歯ブラシは子ども用と親の仕上げ用に分け、こまめに交換して清潔を保つことが大切です。
まとめ
親子で歯の健康を守るためには、歯が生え始めた段階から、年齢ではなく歯の本数に応じた適切なケアを行うことが重要です。赤ちゃんの頃からスキンシップを兼ねた口腔ケアを行い、少しずつ歯みがき習慣を作っていくことで、将来の歯の健康を守ることができます。最終的には、自分で歯みがきができるようになるまで親がしっかりサポートし、家族みんなで楽しい歯みがき習慣を作っていきましょう。
歯科衛生士 やまじゅん
⚫東京医科歯科大学歯学部附属歯科衛生士学校卒業
⚫ライオン歯科衛生研究所入所
⚫子育てのブランクを経て現在は3か所の保健センターと訪問歯科で歯科衛生士として従事している。